三月はお彼岸を迎える月となります。これまでの冬の寒さが緩み、徐々に日中の時間が長くなり、晴れた日には日差しが大変眩しく感じられるようになります。またこの時期は、桜の開花予想などもよく取り上げられ、いよいよ春が近づいていることを感じます。
数年前にテレビの天気予報を見ていた時に、気象予報士さんが三つの春というお話をされていました。そのお話は、私たちの春の感じ方には三つの特徴があるということでした。
一つには光の春。太陽の位置が日に日に高くなり、晴れた日には日差しが雪に反射して、より眩しく感じられるようになります。
二つ目は音の春。日差しの温かさとともに、軒のつららからは雫がぽたぽたと垂れたり、屋根から雪が落ちる音や、車が解けた雪の水しぶきを上げる音などが聞こえてきます。
三つめは気温の春。いよいよ温かさが増し、外に出るとき上着を着なくても過ごせるほどになる時期がやってきます。
春は一足飛びに来るのではなく、このような段階を経てやってくるのですよ、という解説でした。
この時期は季節の変わり目の頃ではありますが、ただ時期が来たから季節は変わっていくのではなく、どういう変化によって私たちの五感にそれを伝えているのかを教えられたお話でありました。仏さまが発信して下さるお働きも、この光・音・温もりがキーワードとなります。阿弥陀如来様の阿弥陀とは『限りなき光といのち』の意味があります。闇を破る光とすべてのものを照らし育てる光、この二つの光が私たちの抱えている暗い闇を破り育ててくださるのです。
阿弥陀如来様にはもう一つ『南無阿弥陀仏』という呼び名があります。「我が名を信じ我が名をとなえよ、我必ず汝を救わん」というお心が込められた声の仏さまです。私の口から称えさせていただくお念仏は阿弥陀様を敬い讃える思いからでありますが、そこには先ず私をお浄土へ迎えようとする阿弥陀様からの願いが満ちているのです。阿弥陀如来様が私たちに向けて願い届けてくださるお心は、どのようなことがあろうとも必ずあなたを救いとる、見放すこと見捨てることは決して致しませんと働かれている温かいお慈悲であります。私を案じてのご恩にも気づかず、関係無いと背中を向け去ろうとも、苦悩に沈み込んでいる時でも、この私を目当てにどこまでも追いかけお慈悲の温もりに包み込もうとされるのです。
命をいただく全ての者は諸行無常の世界を生きています。気づかないほどに刻々と移り変わりゆく世界に身を置きながら瞬く間に時が過ぎていきます。是非お寺にお越し下さり仏様のお心をお受け取りください。お寺のお仲間の方々とともに一緒にお彼岸にお参りさせていただきましょう。
南無阿弥陀仏
由仁町三川鶴林寺 土井清信