法話

人生を転換する出遇い

 今春スタートしたNHKの朝ドラは、日本初の女性弁護士で後に裁判官となったひとりの女性、彼女とその仲間たちの、まだ女性の社会進出が困難な時代に、情熱をもって道なき道を切りひらいていく物語。迷える子供たちや追いつめられた女性たちに、法をもって向き合った三淵嘉子さんの実話に基づいたストーリーです。

 彼女は法律との出会い、特に憲法第14条の理念に感動し、裁判官を目指すことになりました。NHKのラジオで日本国憲法を初めて見た時の気持ちを語った内容が残されています。

「憲法で男女平等ということを知ったのが、私の一生の中で一番素晴らしい瞬間でした。今の若い方には分からないでしょうが、本当に平等ではなかったの!」

 新憲法については国内外の様々な力が複雑に絡み合う中で制定されたものの、戦前の男尊女卑の法律に悲しい思いを余儀なくされていた彼女の人生が転換されることとなった・・・それが憲法第14条「すべての国民は法の下に平等」との出会いでした。それから彼女は戦争で親を亡くした子供や苦境に立たされた女性たちの為、家庭裁判所の設立に奔走していくのです。

 私たちの宗祖親鸞聖人も法然聖人の本願念仏の教えに出遇い、人生が転換されました。数々の災害や争いで疲弊し荒廃した時代に修行などままならない人々、自らを含めた凡夫が救われる道はないだろうかと求め続け、ついに法然聖人の、お念仏によってどんな人でも阿弥陀仏に救われるという教えに帰依されたのです。それは、平等な救いの道でした。

 迷い苦しみ、しかし求め続けた末の出遇い。その感動が、「雑行を棄てて本願に帰す」(教行信証 化身土文類)の一文に表れています。

 親鸞聖人の人生の転換は私たちにとっても転換となり得ます。それは私たち、どんな修行もままならない凡夫の、浄土往生の道が明らかにされたということだからです。

萬行寺 坪井友紀

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