法話

出遇う

 本年4月より空知南組組長に就任いたしました、岩見沢市幌向 本向寺住職 霊山千明です。組内ご寺院、門信徒皆様のご協力を仰ぎながら実りある実践運動を推進してまいります。

 3月の卒業シーズンも終わり、学生だった方たちは新たに進む道へと歩みだしたことでしょう。私たちは人生で「出会いと別れ」をくり返していますが、この時期になると特に「出会いと別れ」を意識してしまいます。「出会う」ことは一般的には喜びや希望、逆に「別れ」には悲しみや喪失感をイメージすることでしょう。しかし、この相反する二つの出来事はお互いの穴を埋め合うものかも知れません。見知らぬ土地へ就職した若者は、家族や友人との別れの喪失感を新たな場所での出会いにより喜びに変える。逆に、出会った喜びや希望に満ちた人生を送っていても、突然の別れにより悲しみに耽る。前者は良い変化、後者は悪い変化にみられますが、必ずしもどちらか一方で落ち着くものではないはずです。出会いと別れをくり返すのが私たちの人生であり、出会いと別れの中からその人の人生は深みと厚みが増していくことであります。

 同じように「誕生」は希望や喜び、「臨終」や「死」は悲しみ・喪失感などの感情を生み出しますが、親鸞聖人は「死ぬ」ことをお浄土へ生れさせていただく「往生」と表されました。この世において「死」は別れの寂しさ悲しさに尽きますが、誕生と死は相反する出来事であっても、「誕生」と「往生」とでは二つの「生」に包まれた人生を歩んでいくと味わうことができます。この世で出会ってこの世で別れるのではなく、この世で「出遇って」浄土でまた会う。

 お念仏のご縁に出遇うことにより、死による別れを「往生」といただきましょう。

岩見沢市幌向 本向寺 霊山千明

PAGE TOP