以前「光」について、光そのものは目に見えないと聞いたことがありました。光は、空気中の水分やチリ、地面や海に当たって反射して輝くのだそうです。宇宙で地球が青く光るのは、地球に空気があるからで、地球と太陽の間の宇宙空間は真空なので暗いままです。真空だと光があたって反射する物質がないから明るくならないのだそうです。
親鸞聖人は阿弥陀如来という仏様について、特に「光の徳」について注目されました。「阿弥陀様の光」とは、具体的には、経典の言葉のことをさします。阿弥陀様自体は目には見えませんが、そのお心はお経に示される言葉となって私たちに届けられています。そしてその言葉は、まるで光が空気や物質にあたって輝くがごとく、私たちの闇を破り、優しく包み、歩むべき道を示してくださるのです。
以前、私は組内若手僧侶の会の会員とともに台湾に行く機会に恵まれ、台北市内に拠点をおき活動している「台北法雷念佛会」さまを訪問させていただいたことがありました。
日本から訪れた私たちを満面の笑顔で迎えてくださった念仏会の皆様。中国語の「真宗宗歌」を歌いつつの、お心のこもった歓迎に、思わず熱いものがこみあげたことでした。
「台北法雷念仏会」が結成されたのは2007年ですが、元々、台湾における浄土真宗の歴史は100年以上あるそうです。近年では台湾に移住し伝道活動を行っていた本願寺派僧侶の野瀬瑞黙氏とのご縁で常例法座が行われ、2013年に野瀬氏がご往生された後も、法座活動は続けられ、現在でも毎週火、水曜の法座に加え、その他の場所でも定期的にご法座が開かれているとのことでした。
「浄土真宗の教えの魅力は?」との問いに、60歳くらいの女性は「このような私であっても、見捨てることなくお救いくださる阿弥陀様に、ただただ感謝です」としみじみとお応えくださいました。
台湾の念仏会の皆様が心から教えを喜んでいらっしゃるお気持ちが、言葉の壁を超えてひしひしと伝わってきました。念仏会の方々にとって、阿弥陀様のお心、経典のお言葉はまさに「光」なのでしょう。それがそれぞれの人生の苦難に至り届き、輝きとなっているご様子に、親鸞聖人が阿弥陀様の「光の徳」について特にお示しくださったことの意味を教えていただいたようでした。
毎日笑顔で悩みなく過ごしたいと誰しもが思いますが、それが思い通りにならないのが「生きる」ということの偽らざる事実でありましょう。しかしたとえ絶望の闇の中にあろうとも、私たちの救いとなるのは「光」であり、それは阿弥陀様のお心を聞くより他ないと親鸞聖人がおっしゃったことを、私のこれからの歩みの上で尋ねていきたいと思うのです。
三笠市善行寺 名和康成